ここ数年、「eスポーツ」という言葉がゲームのイメージを変えています。
プロ選手によるハイレベルな試合を観戦する、という観点からのスポーツ。
年代や体力に関わりなく、更にオンラインで場所を超えて誰もが楽しめるスポーツ、としての認識が広がっています。
そのような中、ゲームで年代や部署を超えて活発な社内コミュニケーションを実現している企業が増えてきており、社員でゲームに取り組む動き「企業eスポーツ部」が注目されています。
今回は企業eスポーツ部に取り組んでいる企業のひとつ、ヤマハ株式会社の企業eスポーツ部「Yamaha esports Boosters」の活動を取材させていただきました。
企業紹介
ヤマハ株式会社

企業eスポーツ部 チーム名

チーム名:Yamaha esports Boosters
自分たちが(Yamahaが)eスポーツを加速させていくのだ、という思いを込めた名称として活動初期メンバーの一人が命名。
部員数
73名
ゲームタイトルごとに「ギルド」という名称で活動。
各ギルドのリーダーとなるメンバーが「コンダクター」と呼ばれて旗振りを行っている。
活動ゲームタイトル
- Apex Legends
- ぷよぷよeスポーツ
- スプラトゥーン2
- PUBG MOBILE
- 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
- ロケットリーグ
- League of Legends
- Team Fight Tactics
- VALORANT
- Shadowverse
- モンスターストライク
など
活動方法・頻度
現在は終業後に各人自宅からオンラインで集まり練習を行っている。
他企業のeスポーツ部との交流戦などが決まると自主練習量が増加。
インタビューした人の紹介
花形さん HN:CeLLiS(ちぇりす)

PA営業部所属。
ツイッター運営やロケットリーグギルドのコンダクターを担当。
『Dota 2』のプレイ時間が2000時間を超えるほどのコアゲーマーでもある。
恩田さん HN:koji (こうじ)

コミュニケーション事業部CC開発部所属。
最も参加人数の多いギルドであるスプラトゥーン2ギルドのコンダクターを担当。スプラトゥーン愛はギルド1と自負している。
鈴木さん HN:だしまき

プロオーディオ事業部MX開発部所属。
eスポーツ部発起人でありヤマハeスポーツブースターズの代表として活動している。
『ヤマハeスポーツブースターズ』立ち上げのきっかけ

‐eスポーツ部設立の時期はいつ頃でその際にどのようなことを行いましたか?
鈴木さん(以下鈴木):最初に活動を行ったのは2019年の2月頃、2年前ですね。
eスポーツの現場や個人ゲーミング環境で、ヤマハの音響機器やネットワーク製品を活用していただいています。市場理解の観点から、社内でも、まずは自分たちでeスポーツイベントを体験してみようと、有志を集め始めたのがきっかけです。
はじめはボトムアップ活動としてモチベーションの高い方々が業務時間外に行っていたのですが、業務改善活動の一環として社内イベントを実施したり、地元の高校生と一緒に校内eスポーツイベント大会を行いイベントのサポートをしたり、ヤマハ発動機さんとイベントを開催したりなどの活動をメディアに取り上げていただき活動の幅が広がっていきました。
‐最初は有志で集まって活動していたんですね。この頃はコロナ禍ではなかったので社内の一か所に集まって活動していたのでしょうか?
鈴木:社内のイベントスペースがあり、そちらが社員食堂の隣にあることもあり、昼休みにイベントを開催して皆さんに足を止めていただけるような工夫もしていました。観客数としては100名程度来ていただけていましたね。
情勢に合わせた活動から観られる光景
‐今回インタビューさせていただいているみなさまが初期メンバーなんでしょうか?
恩田さん(以下恩田):そうですね。私は初期からずっと一緒に活動しています。
花形さん(以下花形):私は二人と少し違い、東京の箱崎にある事務所で働いております。二人は浜松にいるので指をくわえてそのイベントを見ていた形になります(笑)
‐社内報のようなもので活動の話は伝わってきていたのでしょうか?
花形:社内イベントの様子はグループ会社のポータルサイトに活動記事が掲載され目を通すことが出来ていました。
‐どこかのタイミングで二人と接触する機会があったわけですね。
花形:はい、タイミングよくeスポーツブースターズの皆さんと接触する機会がありまして、私もeスポーツブースターズに参加させていただくことになりました。
‐コロナでオンライン化を余儀なくされることもあり、他部署の方でも参加できるような環境になったんですね。
花形:仰る通り、現在の活動はほとんどがオンラインで行われています。私も同じギルドにいるメンバーの顔を知らないままに、オンライン上でワイワイ遊んでいます。
鈴木:未だに私は花形とは一度も直接会ったことがないんですよね(笑)
花形:はい、実は一度も会ったことがないんです(笑)
‐コロナ禍特有で面白いですね。現在はユニフォームが作られているというお話ですが、会社からの正式な承認はされているのでしょうか?
鈴木:昨年2020年10月に正式に会社公認のクラブ活動となりました。
実は、新規クラブの設立自体が社内では10年ぶりだったということもあり、承認フローの確認やルール改定も発生したのですが、各所にご協力を仰ぎながら、なんとか承認いただきました。
『ヤマハeスポーツブースターズ』における「ギルド」とは
‐幅広いゲームタイトルで活動されていますがギルドにする基準はあったりするのでしょうか?
鈴木:基本的にはコンダクターの「やりたい」という強い意志でギルドが立ち上げられます。ギルドメンバーの数で決めているわけではなく、「このゲームのコンダクターになりたい」という方が現れたらギルド成立となります。
「1人でも2人でも100人でも、上手くギルド運営を回していただけるのであればそれで構いません」というのが基本ポリシーになっています。
恩田:実際ギルドの中にはコンダクター1人しかいないというところもありますよね。
‐具体的にはどのタイトルでしょうか。
鈴木:たとえば『クラロワ』ですね。
‐ツイッター上で紹介されていないのは、人数が少ないからでしょうか。
花形:それも懸念点でしたが、実はツイートの140字制限の中にどれを書こうか、という問題もありました。
鈴木:ツイッターにタイトルを書くと他企業さんからお誘いなどをいただく機会も増えると思うのですが、メンバー不足でお断りしなければならないとなると申し訳ないですからね。
‐ギルドをやりたいという人がいるならば、1チーム分の人数が揃っているのが理想ですね。
花形:そうですね。人が足りないところは他のギルドから人を派遣して頂いています。大体は自分がメンバーの補填要員になっています(笑)
鈴木:うちのeスポーツ部の特徴的なところとして、ギルドの1つにイベントや配信をすることを目的とするギルドがあるんです。ゲームをやるのではなく。
コロナ禍で大々的にイベントが出来ていないんですが、こちらのギルドも多くの人数が集まっています。
配信で使用される技術や製品など、情報を整えて部員がゲーム実況などをやりやすい環境を作っていきましょうといったことや、社内イベントなどを今後も定期的に開催していけるように態勢を整えていきましょうといったことを行っているギルドです。
‐コロナ禍でなければ特定のゲームタイトルで他社とイベントなどを行って配信関連等でお手伝いをしていくといった形でしょうか。
鈴木:はい、その通りです。
‐緊急事態宣言が解除された際に、他のeスポーツ部よりも機材とノウハウを持っていることは強みになりますね。
鈴木:そうですね。我々自身が自社製品をイベント活用して、楽しみながらノウハウを蓄積できたら嬉しいですね。
『ヤマハeスポーツブースターズ』のこれまでの活動

‐これまでの活動として、以前2社他企業さんと『ロケットリーグ』で対戦されていましたが、普段はどのように対戦相手を探したり話を進めたりしてるのでしょうか。
花形:実はロケットリーグの対抗戦の件は相手方から直接お誘いを頂いたんですよね。対抗戦をしたケースは、ツイッターのDMでお誘いを受けたパターンが100%になっています。本当は我々からもお誘いなど動かなければならないなと腹の底でもやもやしながら思っています。
‐ツイートが活発なので他社の方が声をかけやすいのではないでしょうか。
花形:そうですね。(インタビュー時点で)4日くらいサボっていますが(笑)
‐今回お誘いを頂いた企業以外で『ロケットリーグ』の対抗戦を行った企業はありますか?
花形:公にしているのは先ほどの2社のみです。事前に打ち合わせをしたうえで配信もさせていただきました。また、対抗戦終了後にエキシビジョンマッチ等もさせていただきました。
ロケットリーグ自体が高校生eスポーツ選手権などで採用されているゲームタイトルですし、僕個人がギルド長やツイッターの窓口をやっているということもあり、このタイトルは盛り上げていきたいですね。
‐申し込みが来た時、実際にやってみてロケットリーグギルドの反応などはいかがでしたか?
花形:おそらく他のギルドでも同じだと思いますが、やはりモチベーションは上がります。なにか目標があってみんなで練習するというのが一番上達すると思うのでお話を頂いたときは盛り上がります。
部員はやっぱり負けたくないので、僕が声を掛けずとも「みんなで練習しませんか」などお声掛けを頂きますね。Discord上でメンションが送られてくることもあります(笑)
鈴木:他のギルドも触発されて急に練習量が増えますよね。
花形:そうですね。そういう意味でモチベーションにすごく繋がっていると思いますし、こなせばこなすほどメンバーの動きがすごく良くなっていく様子が見受けられましたので、非常にプラスに捉えています。この先もどんどんやっていきたいですし、ガリバーさんもサクセスさんもそうですが、2回3回と繰り返して最終的には大きな流れを我々からも作っていくことが出来たらいいなと考えています。
‐今回お誘いを頂いた2社とは全く接点はなかったんでしょうか。
花形:特にロケットリーグについてはそうですね。接点が全くない企業さんとやらせていただくことのほうが多いです。
他のゲームでは、Rolandさんとご縁があり、スプラトゥーン2で交流戦を行いました。
恩田:こちらも声を掛けていただいて開催することになったのですが、普段Rolandさんと直接関わることは殆どないので、eスポーツをやっていることにより繋がりができたことはすごく良いことだと思っています。
浜松には他にも楽器メーカーがあるので「業界対抗戦」みたいなことをやりたいなと思っています。
‐Rolandさんとの戦いはもっと世間で話題になってもいいと思います。一大事ですよ。
花形:一部の方からはSNS上で熱い反応をいただいていまして、当時インプレッションを稼げた内容の1つでした。
音響業界の方々もヤマハvsRolandには興味を示していましたね。ちょっとした話題提供にはなったかなと思っています。
‐本来ならあり得なかった組み合わせやビジネスの機会、話題作りになったりと世間の認知が広まればなと思いますね。
花形:他方で、社内イベントについてももう少し露出していきたいなと考えていて、それと同時並行的に今後も企業交流戦には積極的に参加していきたいと思っています。
『ヤマハeスポーツブースターズ』設立後の社内での変化は?
‐こういった活動を通して会社内や日々の仕事等で影響や変化は感じますか?
鈴木:まずは圧倒的に社内交流が進んでいますね。今まで全く絡むことがなかった部署の方と知り合いになっているということが挙げられます。
それなりの規模があるメーカーなので花形のいる営業から我々のいる開発、また生産の現場で働いている方々まで、3つの部署が交流しながら仕事することはなかなかないんですよね。
なのでこの交流を通してちょっとした革命が起きているのではないかと思います。
‐違う部署の方がお互いに認識して交流するようになると、仕事がしやすくなったり、あるいは新しいことを一緒にやろうというメリットがうまれたりしますか。
鈴木:あると思います。仕事の中であのギルドの誰々ってあなたなの?みたいな話が出てくることはあり、その話を発端に話が盛り上がるということも起きているので今後もコミュニケーションにおけるメリットは期待できると思っています。
‐お二人はいかがでしょうか。
恩田:スプラトゥーンギルドにも様々な部署の方がいるのですが、顔を合わせたことがなかったメンバーと仕事で合う機会があり、実際に「もしかして○○さん?」という話から盛り上がることができ、仕事が進めやすくなりました。
また、異なる部署のソフト開発者が集まってDiscordのbotを作りたいという話がありました。
そこで、Discord内に「ソフト開発室」というチャンネルを立ち上げて、勉強会を通して作りたい機能を実現していくという活動も行っています。
‐社内勉強会のようなものですね。
恩田:そうですね。あくまで仕事の外の話なんですけど。
鈴木:eスポーツ部の中で使えるDiscordのbotを作るというテーマなら自分もプログラミングの勉強をしてみたい、という人が出てきたり。
‐やはりスプラトゥーンをプレイする際に便利な機能を拡張しようといった感じなのでしょうか。
恩田:
そうですね。リーグマッチのスケジュールをつぶやくbotを作っています。
自分が参加したい時間帯をリアクションしておくと、メンバーが4人集まった時点で「メンバー確定ですよ」と通知してくれるのです。
‐リーグマッチのbot、スプラプレイヤーには便利で嬉しいですね。
鈴木:そうですね。他でも需要があるかもしれませんね。
‐Discord内にヒメとイイダ(ゲーム内でニュースを教えてくれるキャラクター)を自分たちで登場させてしまおうという(笑)
鈴木:はい、今はブキチがお知らせしてくれるようにしていますけどね(笑)
‐自分たちの活動と趣味を直結させて勉強のモチベーションに繋げる、いいですね。花形さんは同じような経験がおありでしょうか?
花形:ブースターズには同じ会社のメンバーが2名います。APEXとスマブラのギルドに1名ずつですね。
やはりコミュニケーションの部分では「先日のマッチメイキングではどうも」といった話から仕事がスタートするように話しやすさは格段に良くなりますね。
開発の皆さんと私のような営業が直接会話する機会が今まで少なかったのでいい機会を作れているという認識を持っています。
もう一つあるとしたら、社内的にeスポーツというカルチャー自体認知度が低かったところが改善されつつあります。
私の元に「eスポーツの現状はどうなっているのか」についての質問が来るようになってきたので、少しずつ社内からの注目を集められている実感があります。
ボトムアップの活動からスタートした、という点を考えるとまずまずの実績だと思いますし、推し進めてきて良かったと感じています。
3名の今後のビジョンについて
‐最後にそれぞれ簡単なご自身の目標ややりたいと思っていることを教えていただきたいです。
花形:野望はあります。ゲーミングアリーナを日本に造る、という。
‐施設ですか!確かに今増えていますよね。
花形:そうですね。私が目指しているものは所謂大会を観戦するための大きなホールです。
造ると言ってもそこでヤマハの機器が活躍できる場所を作って自分自身もそこに携われるようになるといったように、そういうことをするための土壌を今『ヤマハeスポーツブースターズ』で作っているというわけです。
‐既存の施設にもヤマハ製品がすでに使われていますが、さらに拡大していくんですね。
花形:現状コロナ禍の影響もあり、eスポーツ施設の運営はまだまだ課題が多いですが、志ある方々のお手伝いができるように地道に草の根的活動をコツコツと頑張っていきます。
‐ありがとうございます。恩田さんはどうでしょうか。
恩田:来年度にはスプラトゥーン2の社内リーグ戦を開催し、優勝を競っていきたいなと思っています。
そうすることでチームとしての練習をしたり、また活動が活発になるのではないかと思います。
スプラトゥーンギルドとしてはとにかく活動を継続していくということを目標にしていますので、飽きられないような工夫や活動をしていきたいなと思っています。
‐モチベーションの維持は社内eスポーツ部にとってとても重要だと思います。社内リーグ、素晴らしいです。「ヤマハeスポーツブースターズ」最強の4名が選出されるのも楽しみですね。
恩田:優勝したチームが次のヤマハ代表になるとかそういうのもいいかもしれないですね。
‐ちなみにご自身も優勝を狙っているのでしょうか。
恩田:そうですね。一応私も上から4番目くらいのギリギリのところにいるのでこれからも精進していきたいなと思っています。
‐ありがとうございます。鈴木さんも同じスプラトゥーンのプレイヤーですから負けられない、という気持でしょうか。
鈴木:私は5番目にいるので順番を抜かしてやろうと思います。
花形、恩田をはじめ、いまギルドコンダクターを担ってくれているような若者たちのモチベーションが、とにかく凄いのです。なので、目標というよりこれは私の使命ですが、部員みんなのモチベーションを萎えさせないように、社内と社外にアピールし続けていきたいなと思っています。
いつか、花形の造ったアリーナで、部員全員でオフライン大会を開催したいですね。
花形:やはりオフで早く会いたいですね。
鈴木:隣で座ってやりたいですよね。ゲーム。
‐逆に考えればオンラインで繋がろうという時期だからこそ生まれた新しい縁ともいえますね。今後、オフラインで会う楽しみができたと思えば、つらい時期を前向きに頑張れる力になるのではないでしょうか。
鈴木:上手くこの時期で力を溜められていると思います。解放されたときの爆発具合が楽しみですね。
‐そうですね。存分に発散していただければと思います。この度はインタビュー、ありがとうございました!
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