「学び」と「体験」を合わせることでeスポーツの理解を促進するイベント『eSPORTS TRINITY』レポート




2019年10月23日に凸版印刷株式会社、株式会社電通、株式会社サイバー・コミュニケーションズの3社共同にて企業向けのeスポーツイベント「eSPORTS TRINITY」が開催されました。

eスポーツに注目する企業が増える近年、企業に向けたeスポーツイベントが数多く開催されるようになってきました。

その内容の多くは

・eスポーツについての知識を深める勉強会、討論会

・eスポーツに注目する企業を繋ぐ目的の、企業限定eスポーツ大会

というものです。

対してeSPORTS TRINITYは「LEARN、FEEL、FUN」をロゴ内に掲げ「日本のビジネスシーンへ e スポーツの新たな知識、感動、興奮を提供する」を開催目的としています。

2部制の形をとり、前半に勉強会という「学び」 後半に企業交流戦という「体験」を一イベント内で同時に行うという構成となっています。

従来の企業向けeスポーツイベントと異なるeSPORTS TRINITYを振り返ります。

eSPORTS TRINITY概要はこちらの紹介記事をご覧ください

■会場選定から従来の企業向けeスポーツイベントと一線を画する

イベントの会場は凸版印刷オフィスビル内にあるカフェレストランが使用されました。

来場者用の椅子が並べられ、プロジェクタ、スクリーンを配置し登壇プレゼンが進行できるよう整えられています。

イベントスタッフは女性ゲーミングチーム「G-STAR Gaming」のメンバーが担当。

今回後半のゲーム大会でプレイされるストリートファイターVをG-STAR Gamingメンバーと対戦することができるブースも設置されています。

カフェレストランであることを活かして、イベント会場後方にはフリードリンク・フードのコーナーも用意されています。

企業向けeスポーツイベントにおいて、勉強会や有識者セッションなどは会議室やプレゼンルームといった固めの会場が使われることがほとんどです。

ここまでくだけた雰囲気の会場が使われることは珍しいケースです。

■エンターテインメントの体験と、異業種交流の機会を作る会場

よくある企業勉強会イベントは、着席しセッションを聴講することにだけに集中してしまいがちです。

この会場では、華やかなプロゲーマーの協力により、eスポーツ・ゲームの体験の機会を上手く提供していました。

そしてフリードリンク・フードコーナーも、自然に来場者を集合させ、会場の賑やかさが活発な名刺交換や談笑を促す働きをしていたようです。

eスポーツに興味を持っている、という企業は多くあります。その同じ方向を見ている企業を、業種を超えて繋がれる機会を提供する、というのはeスポーツ発展に大きな意義があります。

異業種交流という観点では、会場設営に協力している企業も注目です。

主催の一社、株式会社サイバー・コミュニケーションズからはDJの技能をお持ちの方が会場BGM演出を担当。

会場演出としての効果もさることながら、企業交流イベントは参加企業で作る、ということが感じられ、単なる勉強会ではないということを来場者に伝える機能をはたしているようでした。

株式会社Life is Styleはサイネージ広告機材「3D Phantom®」でeSPORTS TRINITYのロゴを会場に掲示。

eスポーツが通常なかなか交わらない様々な分野の企業が集まり、繋がる機会を作り出していました。

■eスポーツ産業の今とこれからを「学ぶ」ための二人の登壇講師

イベントはG-STAR Gamingプロデューサー倉持由香氏の司会で進行。

第1部は「eSPORTSビジネスセミナー」

二名のeスポーツ有識者による登壇が行われました。

一人目は、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)事務局長 大谷剛久氏です。

「eスポーツの国内市場動向とJeSUの役割」について解説や紹介を行われました。

近年、eスポーツという言葉は流行していますが、まだeスポーツに興味はあるものの、その実態や言葉が意味するものを把握できていないという企業も多いはずです。

そこで大谷氏から、まずeスポーツとはなにか・日本での動向や市場として見た際の現状はどんなものか、といった解説がされました。

さらに国際的なeスポーツ大会および、日本での賞金付き大会の円滑な開催のために設立されたJeSUについてのお話が続きます。

eスポーツに興味を持っている企業にとって、まず把握しておきたい基礎的な情報と、日本eスポーツの現状を知ることができる内容の登壇でした。

2人目は、eスポーツ業界アナリスト 但木一真氏です。

ゲーム業界のマーケティング分析をされていた経験から、eスポーツに関する記事執筆やコンサルティングをなど様々な活躍をされている但木氏。

今回はコンサルティングの観点から「eスポーツの広告的価値のビジネスチャンス」という登壇を行われました。

プロモーション戦略としてeスポーツを活用する際に持つべき視点の指摘や、eスポーツチームへのスポンサードに際して、安易なスポンサードではなく、短期的効果・長期的効果を考慮し、スポンサーとチームがWin-Winの関係を築く必要性を語られました。

但木氏は今回の登壇だけでなく、編著「1億3000万人のためのeスポーツ入門」の出版や、オンラインサロン「eスポーツラボ」の主催など、eスポーツに関わろうという人・企業に有益な情報を多く提示しています。

eスポーツについて、まず大谷氏から基礎的な情報が語られ、続き但木氏から実践的なアドバイスが示されるという聴講者にとって分かりやすく有益な構成の登壇でした。

■eスポーツの熱を「体験」するためのミニeスポーツ大会

続き、第2部は「AFTER6 LEAGUE」と題したeスポーツ企業対抗戦が実施されました。

今回はゲームタイトルにストリートファイターVアーケードエディションが使われ、8社8名の選手によるトーナメントが行われました。

実況解説をプロゲーミングチームBurningCore所属のなない氏が担当。

プロの解説を受けて、選手はステージ前方に設置された1vs1の対面型対戦台にてゲームプレイ。その様子はプロジェクターで会場へ大写しにされます。

参加者は一般社会人のミニ大会ではありますが、演出の力の入れ具合はプロ大会に通じるものがありました。

選手として参加した来場者はもちろん、会場で対戦を観戦する他の来場者も一体となって盛り上がっていました。

このeスポーツを観戦して盛り上がる、という体験。これまでeスポーツに興味はあったものの、eスポーツ大会の現場に足を運んだことはなかった、という企業人も多いはずです。

そういったeスポーツ未体験者に、今なぜeスポーツが隆盛しつつあるのか、その熱を体験させる機会を用意したことはeSPORTS TRINITYの大きな意義ではないでしょうか。

■LEARN、FEEL、FUN 知識だけでなく体験を通して本当の共感を

このようにeSPORTS TRINITYは、eスポーツ勉強会登壇とeスポーツ大会を2部構成で同時に行う、というこれまでになかった形の企業向けeスポーツイベントでした。

この構成は「eスポーツイベントの参加を促す」ことと「eスポーツを、知識興味の段階から共感までの啓蒙」という2つの効果を狙ったものではないでしょうか。

eスポーツ勉強会に参加することでeスポーツの知識を得ることはできます。

ですがeスポーツは「スポーツ」であり「エンターテインメント」であるため、机上だけでは感じ取れない熱、この隆盛の原点となっている本質があるはずです。それを体験しなければ、eスポーツをビジネスチャンスの新産業という単なるデータとして捉えてしまうかもしれません。

その体験のためのeスポーツイベントや、企業交流ゲームイベントの開催が増えています。

ですが、こういったイベントについても「ゲーム=遊び」というイメージから参加についてバイアスのかかる企業も少なくありません。

またeスポーツに意欲的な企業であっても、ゲームタイトルのプレイヤーがいないため参加を見合わせてしまう、というケースも散見されます。

eSPORTS TRINITYは多くの企業に参加を促しつつ、eスポーツを体験させるために「eスポーツ勉強会」と「社会人eスポーツ大会」の2部構成をとっています。

第1部のeスポーツ勉強会にて参加企業の間口を広げ、第2部の社会人eスポーツ大会に観戦者としても参加させる。

eスポーツの本当の理解のために、eスポーツの体験が必要な企業へのアプローチがなされています。

■eSPORTS TRINITYは今後も定期的に開催を予定

eSPORTS TRINITYは今後四半期に1度の定期的な開催を予定しているとのことです。

次回は2020年1月の開催予定となります。

産業としてのeスポーツが影響を与え関連するであろう業種は多岐にわたります。

その可能性を感じつつも、eスポーツについて知識、体験がまだ足りていないという企業はまだまだ多いはずです。

eスポーツの理解と啓蒙を進めるeSPORTS TRINITY。eスポーツへ関わる企業、業界は必見のイベントとなるはずです。

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株式会社エイプリルナイツ メディア・イベント事業部。 ライトゲーマーゆえに、ゲームがボーダーレスなコミュニケーションツールになると感じています。社会人ゲーム文化の活性化をさせていきます。