企業eスポーツ部インタビュー:BASE株式会社




ここ数年、「eスポーツ」という言葉がゲームのイメージを変えています。

プロ選手によるハイレベルな試合を観戦する、という観点からのスポーツ。

年代や体力に関わりなく、更にオンラインで場所を超えて誰もが楽しめるスポーツ、としての認識が広がっています。

そのような中、ゲームで年代や部署を超えて活発な社内コミュニケーションを実現している企業が増えてきており、社員でゲームに取り組む動き「企業eスポーツ部」が注目されています。

今回は企業eスポーツ部活動に取り組んでいる企業のひとつ、BASE株式会社の企業eスポーツ活動を取材させていただきました。

企業紹介

BASE株式会社

チーム名

チーム名:BASE Athletes 

 

主にプレイするゲームタイトル

・Apex Legends
・ブロスタ
など

インタビューした人について 

石井さん

石井さん(以下、石井):BASE Athlete Groupマネージャーの石井と申します。

普段の業務内容といたしましては、BASE Athlete Groupのマネジメント業務です。

他にはTwitterなどのSNSを利用してeスポーツ部を持っている企業と繋がり、eスポーツやゲームを通じて企業交流を行っています。

BASE Athlete Groupの特徴としてはそれぞれが社会的な身体障害を持っているメンバーで構成されています。
そういったスペシャリティーを持っていてもゲームで活動ができるという事を発信していくことも業務の一つですね。
その他には、メディアで記事を書いて、発信したりしています。

社内的な役割としては障害者の法定雇用率といって、会社に一定数障害者を雇用しないといけない法律があるので、まずそれを満たすために会社にメンバーが必要でした。
スペシャリティーがあるとできる仕事が限定されてしまう中で、自発的に楽しくやれる仕事を作り出したいという思いから、ゲームを通じて社内交流や社外交流をすることを始めました。そうすることで社内の生産性が向上したり、社外交流のきっかけで受注が取れたりすることで、私達の働き方が確立された価値となっていけばいいなと思っています。

- 普段プレイするゲームはありますか?

石井:ゲーム歴はH1Z1からPCゲームを始め、その後PUBG、VALORANTの順にプレイしてきて、今はApex LegendsとEscape from Tarkovにどっぷりハマっていています。

ゲームの良い面、悪い面でもある、ゲームに没入しすぎて、様々な優先順位が入れ替わってしまうリスクがある事を自分自身も体験しながら、こういうリスクへの向き合い方やどういうふうにマネジメントしていくのかを、自分を実験対象にしながら日々プレイしています。

またそこで感じた知見をデータとしてアウトプットすれば、これも一つの業務だなと思いながらやっていますね。

TATSUYAさん 

TATSUYAさん(以下、TATSUYA):BASEのAthlete Groupに所属しているTATSUYAと申します。

業務はアスリートとして選手活動をさせていただいております。

私はパラリンピック競技のボッチャを17年ぐらいやっていて、全国大会で2回優勝させていただいたり、上位8人の中に常に入っているレベル感でやっています。
一方、eスポーツで私が最初に取り組み始めたタイトルはレインボーシックスシージでBASEに入社する時までにかなりやり込んでました。
eスポーツだけに限らずいろんなスポーツに取り組みながら頑張っています。

ー スポーツの感覚をゲームに活用できることはありましたか?

スポーツの感覚をゲームに活用できることはありましたか?

TATSUYA:そんなに活用されていないですね(笑)

スポーツで体を動かしてた方が精神的にあまり負担がないんですね。
ゲームで体を動かさずに脳だけ使っているとかなりストレスが回るので、またそこは別物なのかなと思います。

スポーツを長く続けていると成長が止まる瞬間っていうのがあるんですけど、eスポーツの場合だと結構常にそういう感覚に襲われる傾向があって、かなり毎日プレッシャーを感じながらやっていますね。

本当にeスポーツという競技はレベルの高い世界なんだなって実感しています。

芳野さん

芳野さん(以下、芳野):BASEのAthlete Groupに所属している芳野と申します。

BASEに入社した時は日本初のパラeスポーツアスリートとして各メディアさんに記事を書いていただきました。

社内的な役割としてはイベントや大会に参加することを業務としてやっています。
他にも記事を書かせていただいたりして幅広くやらせて頂いてます。

ゲーム歴は戦場のカルマというFPSから始まり、その後ペーパーマン、スペシャルフォースをプレイしてきて、中学生ぐらいの頃からずっとFPSをプレイしてきました。
そこで高校に入ったくらいの頃にFPSで大会に出場したいと思い、オフライン大会に出場することにしたんですよね。
大会に出ると生配信していて数千人ぐらいの人が見てくれた中でプレイすることになり、選手の顔も出されるんですよ。
会場のカメラで写してもらった時に、私の持病の関係でお腹がすごくぽっこりしていたことから、配信のコメントで結構悪口書かれて、それが怖くて一時期大会に出なかったりとかしたことがあったんですよね。

そんなエピソードも踏まえて、今後はいろんな障害を持っている人がeスポーツの大会に出場したり、もっと活動しやすい環境を作る役割を担っていきたいです。

ー チームを立ち上げたきっかけについて

左:石井さん 中央:芳野さん 右:TATSUYAさん

石井:弊社が障害者の法廷雇用率を達成しないといけないという中で障害者の雇用を進めていく段階がありました。

本来は本業の中の業務を切り出してやってもらうってことを考えていたのですが、テクニカルな業務が多い中、障害者雇用でマッチする経験値を持つ方を見つけるのは難しいということから、新しく何か活動を起こしていこうという考えから始まりました。

そんな時、役員の中でスポーツを応援したいねという所が発端でスポーツを取り入れることに重きを置かれました。

そしてeスポーツというのが騒がれ始めたのが、2018年ぐらいからだったと思うんですけど、うちの会社は半数エンジニアが在籍している会社構成でエンジニアとゲームってすごく親和性が高いなと思い、eスポーツ活動することで社内交流や普段の業務のモチベーションに繋がるという仮説の中でeスポーツを始めたのがきっかけです。

実はその時まだ僕は加入しておらず、前任者から聞いた話ですが最初に芳野を採用するまでにそもそもそういうのが成立するのかとか、そういう求職者がいるのかというのを一年半ぐらい人材紹介会社と相談しやっと最初のメンバーの芳野にたどり着いて採用に至ったそうです。

まだその時は芳野だけだったのでチームとして成立しておらず、どういう風に活動していくか明確になっていない中、2019年に行われたの東京ゲームショウでLenovoさん主催のPUBG大会に出場し当時、僕は東京ヴェルディeスポーツチームのコーチをやっていたので僕は東京ヴェルディeスポーツチームとして出場しました。

BASEは芳野と当時の人事で出場していました。

そこで芳野達と出会った時に僕は車椅子に乗ってるので、この人は障害を持っている方だと分かったらしく僕が業務委託という形で選手のマネージメントを含めてチームに関わっていきましょうという話になり加入しました。

同じぐらいのタイミングでTATSUYAも加入するのですが、そのきっかけは群馬で初めて障害者だけのeスポーツ大会が開かれたことでした。

そこに芳野と見に行く時に事前にリクルーティングもしようという事でパラリンピック競技のボッチャでもブイブイ言わしているTATSUYAがいるらしいよという情報を事前に持って、実際に現地に行って声をかけた所から採用に至りました。

そして、この3人が集まり、3人いればそれなりにeスポーツタイトルができるのでBASE Athlete Groupを本格的に始動させていきました。

ー cogme cupに参加しようと思ったきっかけ

cogme cup#3 ApexLegends 出場時の写真

石井:元々はJCGさん主催のFACEに出場していたんですけど、別の大会がないかなって探していた時にcogme cupを見つけて参加しました。

もう一つの理由はVALORANTが発表されてから競技シーンとしてトップを目指すということを目標にして練習してきたのですが、プロシーンの人は1日10時間とか練習するのに対してうちは週2回の3時間とかの練習環境で技術的に追いつかないという事を学びました。
競技シーンでバリバリやってくっていうのは会社としてスタイルとしては無理があるという事で次の方向性として企業交流みたいなのが流行りつつあったので独自で交流していく所からスタートしていきました。

ー 普段の練習で苦労した点とかそのエピソードはありますか?

芳野:僕はApex Legendsのシーズン1~4までプレイしていたんですけど、復帰したのが去年の5月からでした。
復帰してもあまりモチベーションがない状況が続いて、とりあえずランクをひたすら上げる所から始めました。

そこからダイヤくらいまで上げた時に、もう敵もなんか強いし、苦しいなぁとか思いながらやってました。
そんなタイミングでcogme cupに出会い、そこからは大会で勝つことをモチベにひたすら練習してましたね。

練習する時も動画を回して、試合が終わった度に見返して「あの時こうすれば良かったなぁ」と常に振り返りながらやっていました。

エピソードとしては当時ランクを上げることが、とにかくしんどくて以前メンタルコーチをしておられた石井さんに相談したことがありました。

バトロワの性質上、戦闘練習を目的にランクをすると、すぐに負けてランクが上がらなくなるんですよね。
石井さんに「ランクだけを上げる立ち回りを重視してやっているとすごく自分の中で苦しくなる、どうすればいいですか?」って相談した時に「そもそも打ち勝てるようになりたいのか、ランクを上げたいのかどっち?」って言ってもらってそこから自分のルールを作りました。

ダイヤまでは立ち回り重視で行って、ダイヤ以上は打ち合い重視でやろうっていうルーティンを守ってcogme cup本番までずっと練習してました。

結果的に第二回cogme cupの時にはまだダイヤのままだったんですけど、そこからcogme cupの影響もあってモチベが上がってきて、シーズン9でマスターになれました。

その時は本当にうれしくてなきそうになりましたね。

ー ゲームとスポーツのコーチングに違いはありますか?

石井:もちろん似たような側面もたくさんありますし、違った面もたくさんあると思っています。

例えば競技シーンとランクマッチあるいはカジュアルって全然戦い方が違うじゃないですか。
スクリムとかが活性化されていつでも誰でも気軽にできる状態があればその大会本番に向けた練習はできるんですけど、ランクやカジュアルだと本番の環境と違うんですよね。

やはりそこが一番問題で、僕もフィジカルの強化でランクで練習しようと思ってもチート問題とか含め、自分をモチベートしながら大会シーンでも活躍できる練習方法が導き出せないのが大きな課題点ではありました。

練習環境をいかに本番近づけていくのが、リアルの競技でもやはり大事なところなのでそこは大変でしたね。

その大会シーンで活躍するために何が必要かちゃんと想像した上で日々の練習を組み立てられるかどうかが特にやっぱり大会で結果を出すという意味ではすごく必要だと思います。
芳野から相談を受けた時も、そもそも楽しみたいのかそれとも技術あげたいのかという所を自分の中で認識する事が大事で、その上で楽しみたいのであれば「楽しむやり方はどうすればよいか」っていうのを見つけていくってことはやっていましたね。

ー 3人で練習したときは何か苦労したこととかありました?また作戦のオーダーとかはどなたがやっていますか?

TATSUYA:チームのオーダーは芳野さんがやっています。

私は今までバトロワに触れる機会が本当に少なくてApex Legends始めたのも去年の5月とかなんですよね。

そこから練習してまず熟練者の芳野君に合わせるのが結構大変だったっていうのはありましたね。

実力的には僕が一番低かったのでいろんな練習に取り組みましたが、石井さん、芳野さんにはいろいろ聞きながら大会に向けて強くなる事を目標にやってきました。

第2回のcogme cupはPC版限定という事でキーボードとマウスを使おうと思ってたんですけどちょっと疲れを感じてしまうところがあったので、コントローラーで大会出場させていただきました。

コントローラーだとちょっと動きが鈍かったり、PCと比べるとやりにくさを感じました。
でも撃ち合いの所はずっとFPSをやっていたっていうこともあって、結構自信があったのでその辺を強化していましたね。
あと僕はアスリートやっていたという所もあって、そんなに練習が辛いとは感じなくて、大会前もみんなで成長していけたっていうところがありましたね。

ー 今後どのような活動をしていきたいですか?

石井:オフラインの大会で選手が入場する時に出てくるのが車椅子の人だったり、見た目は女性なんだけど男性だったりとそういう人でも障壁なくeスポーツができるという世界観を発信したいです。

今回の記事とかも別に障害があることはそこまで触れる必要はなくて、そういう人もeスポーツやっているよねぐらいの感覚で良くて、僕達は健常者と全く同じ土俵で戦えるっていうのが日常の中そんなにないんですよね。

僕もTATSUYAも障害者スポーツというカテゴリーの中でやってきましたけど、圧倒的に健常者の方が多い世界の中で生きてるのでそういう人達とも一緒に戦いたい気持ちもあるしそれを叶えてくれるのはこのeスポーツだと思ってるんですよね。

企業交流の中でもきっとそれは出来ると思っていて、コロナが収束しオフラインで「お話も兼ねて、うちの会社でゲームやりましょうよ。」みたいになった時、車椅子のメンバーがいることをお伝えして、じゃあ車椅子の人を社内に迎える時ってどういう配慮が必要なんだっけ?みたいなことを、ゲームをやるために障害を持ってる人の配慮を考える、この順番が大事だと思っています。

会社の体裁良くするためにとかで障害者の配慮を考えようっていうのが目的になってしまうのはナンセンスだと思っていて、あくまでもゲーム楽しくやりたいよねっていう延長線の中で、そういう多様な人たちと共生するためにはどういった配慮が必要なのかということを感じられる機会を増やしていくのが目指してる大きなビジョンです。

- 快適に楽しく遊ぶためにみんなで工夫する。ということですね

石井:そうですね。
引きこもりみたいな人だったり、精神疾患の人とかでも直接、会わない人だったらコミュニケーションが出来るっていう所から、コミュニケーションが苦手な人でもゲームコミュニティからそれが克服されるみたいみたいな事例もたくさんあると思います。

そういう風にいろんな目に見えない障壁がある人の方がたくさんいると思うので、そういう人達も僕らの発信を通じて、こういう人でも出来るなら自分でも出来る、という思いが活気になる側面も合わせて持っていると思うので、これを2軸としてやっていきたいです。

ー インタビューありがとうございました!

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